シリーズ連載 

第1回カービングスキー時代のテレマークスキーレーステクニック 1

第2回カービングスキー時代のテレマークスキーレーステクニック 2
第3回カービングスキー時代のテレマークスキーレーステクニック 3
 第3回 「 カービングスキー時代のテレマークスキーレーステクニック 3 」
上 野 英 孝 
 既にアルペンやジャンプ、ノルディックのWCが各国で開催されているのはご存知であろう。そんな中テレマークスキーのWCも1月のヨーロッパシリーズと3月のアメリカ会場が決定された。(12月10日現在)開催国は全てで6カ国と他のウインタースポーツに比べ開催数やその規模は小さい。しかもオリンピック種目ではないのが残念である。しかし、テレマークスキーという共通のスポーツを通じ世界のアスリートと戦うことができるのは、ツアーでも、パウダーでもない、紛れも無く、レースしかないのは事実である。

 さて、カービング時代のテレマークスキーテクニックであるが今回で3回目の投稿となる。シーズン中盤でそろそろ皆さんもマテリアルや雪に慣れた頃だろう。そろそろ新たな滑りへ挑戦する頃であろうか。

 新たな滑りや技術というのはあくまでも挑戦という意味でありその技術の基本は不滅であるといえる。基本的技術の習得があり、初めて挑戦に移れると思う。移動の手段として用いられていたテレマーク技術がここまで発展するとは誰が想像したことであろう。恐らく、この先も、技術の進歩に歯止めが利かないと思う。

 技術の進歩にはマテリアルの進化が付き物であり、その特性を最大限引き出すことが上達といえるかもしれない。

 例えば、カービングスキーの特性を最大限引き出す為の滑り方であれば、トップコントロールによる深い角付けと、サイドカーブの利用が不可欠。また、後ろ足(内足)の使い方も必要となる。後ろ足の使用方法によっては加速感や安定感の違いが生まれる。常に両足同時に荷重し動かすことは不可能であるが、極力ターン後半のしかもスキーの走りを生み出したい瞬間は後ろ足が有効となる。では、具体的に、どのような使い方になるのだろうか?

 イメージとしてはコザックダンスの動きに近くなる。前足は伸び、後ろ足は大腿部が雪面に対して寝る感じ。(ん〜、言葉にするのは非常に難しい。) 前足は伸びそのつま先は上を見るようなポジションで、さらに脹脛とハムストリングが接するようなポジションになる。これは、非常に脚力が必要になるポジションであるが、レースの特にターン後半には必要な運動となる。ただし、急斜面よりも緩斜面での運動になるだろう。テレマークの場合急斜面ではアルペンのようにフルカービングでの滑走は困難だからだ。特に、レースのような規制された場合、急斜面の特にターン前半はテールコントロールを有効に使い、安定したポジションでアタックする方が無難である。
 恐らく、この先の技術展開を予想すると、内足の使い方と、状況に応じた適度な外向傾のバランスがポイントになるだろう。

 レース技術といえば離れた環境や技術と思われがちだが、それは違う。レースといえどもあくまでも基本的な技術やマテリアルの使用方法があった上でレーステクニックが存在するだけで、あくまでも、基本技術を習得し、状況に応じた滑走技術という部分では、ツアーもゲレンデも一緒だ。レース技術だけかけ離れたものではない。

 レース技術に必要不可欠なルールとし定められているのは、スキーブーツ1足分のスタンスを取り、スムーズな切り返しを行うことが条件となる。これは、レースのルールといえばそこまでであるが、せっかくテレマークスキーを使用しているのであれば、全員にそのスタンスは学んで頂きたいと願う。スタンスが狭くていいのであれば、アルペンを使用すればよい。滑走的にはアルペンに敵わないからだ。もしくは、せっかくテレマークスキーなのだから、アルペンでは不可能な前後のスタンスをキープすることはも差別化を図るという意味では大切なことまたは、テレマークらしさだろう。

 私が感じているのは、スタンス1足分はルール上の問題やテクニックではなく、テレマークスキーにおいて、1足分のスタンスをキープするということは、1番安定したポジショニングが可能となると考えている。つまり、リスクなく、どんな斜面でも滑り降りることができる1番有効なスタンスということだ。
 第2回 「 カービングスキー時代のテレマークスキーレーステクニック 2 」
上 野 英 孝 
2007・2008シーズンがスタートした。テレマーカーの皆様にはどのようなシーズンになるのだろうか?怪我や事故の無いシーズンであることを願う。
さて好評頂いている「カービング時代のテレマークレーステクニック」であるが、今回はパート2を掲載しよう!今だかつて経験の無い魅力的なテレマークの世界をご堪能頂きたい。
 FIS(国際スキー連盟)のルールが改正されたのはご存知であろうか?FISでは、FISレースに参加する男子選手のGSサイズを185cm以上、ラディウス27m以上とし、女子選手のサイズを180cm以上、ラディウス23m以上と改正した。今までのラディウスよりも大きくすることにより、高速化が考えられるだろう。その背景には、選手の肉体的負担の軽減やマーケットの活性化などが言われているが、その本質については明確ではない。
 FISルール改正の影響はテレマークレースの世界にも現れることは時間の問題。現在のレーサーが使用するスキーはアルペンレース用のサンドウィッチ構造がほとんどだからだ。
 では具体的にどのような影響が現れるだろう。
 昨年度までのレース用スキーであれば概ね21m,23mと比較的ラディウスの小さいスキーが主流であったが、今シーズン、来シーズンからは概ね27mが主流となると考えられる。27mのスキーを使用するとなると当然今までのようなフルカービングでのポールアタックは難しくなるであろう。ラディウスの変更と平行しポールセットも変更するのであればスキーの扱いは比較的簡単になるだろうが、現在のFISレースを見る限り、大きなポールセットの変更は無い。ということは、各ゲートをどのようにクリアするかが大きな課題となりそうだ。
 これも推測、もしくは私の理想となるが、現在のポールセッティングに27mのスキーで対応するとなると、技術的に若干変更点が生まれると考えられる。特にターン前半のスキー操作とポジショニング。さらにターン後半の外向傾に変更や強調が生まれるであろう。
 今まで以上に、細板技術(基本的な技術)が活かされ、さらに、テールコントロール、テールスライドを駆使しポールをアタックするシーンが多くなるだろう。
 やはり、第1回でも申し上げた通り、基本的な技術の見直しと、挑戦が今後は必要なのではないだろうか。特に、急斜面でのコントロールミスやゲート不通過が多く懸念される。
 アルペンだけではなく、テレマークスキーにおいても、マテリアルの進化が大きく技術を変えている。当然、マテリアルに比例した技術展開をすることが進歩であったり、より効果的な技術であったりする訳だ。マテリアルを上手く活用できるレーサーはより速く滑れるであろうし指導者であれば確実に演技ができるであろう。
 マテリアルの進歩に応じた技術展開がされているということは、レーサーや指導者の応用力が必要ということでなないだろうか?時代の変化や道具の変化に敏速に対応する指導者やレーサーが総合的に称される時代は近いかもしれない。



第1回 「カービングスキー時代のテレマークスキーレーステクニック 1 」
上 野 英 孝 
 私がテレマークスキーを始めて6年目のシーズンが終了した。当時のアルペン スキー界ではカービングスキーが主流。そのカービングスキーがアルペンスキー 界に誕生してから10年以上は経過している。当時のテレマークスキーヤーは、細 板、革靴の時代だったと認識している。そんなマテリアルの誕生はアルペンスキー 技術だけではなく、テレマークスキー技術の変化を予兆するものとなった。
   当時のテレマークスキーレースでは国際ルールにより、最大幅73mmと規程 が設けられており、ルールに則ったマテリアルの使用が義務付けられていた。つ まり、選手のマテリアル選択幅は限られていたのだ。現在ではそのような規制は 設けられておらず、ほとんどの選手が、アルペンFISルールに則ったアルペンレー ス用のR21m、R23mのスキーを使用している。  そんなマテリアルの誕生は、テレマークレースシーンにどのような変革をもたら したのだろうか?
 細板、革靴時代のテレマークレーサーは、ズレやすいスキーを使いこなす為、 強い外向傾とスキッティング技術を武器に戦っていた。当然、カービングという表 現すら無い時代のことだ。当時としては、最新のテレマークスキーテクニックであ り、一番安定するポジションでの滑走方法。現在でも、その技術は基本的動作の 一部とし用いられている、非常に大切で基本的な技術といえるだろう。
 最新マテリアルの誕生と技術の変化は、多くの疑問や多くの指導方法をもたらし 様々な議論を生む結果ともなった。しかし、基本的な技術は何ら変わりない。 では、技術的にどのように変化し、どんな技術が効率的で理想的なのだろうか?
 細板時代に比べ大きく変化した技術は、内傾軸と脚部の傾きだろう。当然、マテ リアルを効率よく使いこなす為の結果となるが、単純にはマテリアルの持つサイド カーブの利用方法が可能となったということだ。細板に比べ、広いトップとテール。 切れを出す為の細いセンターがもたらす深い角付け角は、そのマテリアルの性能 を最大限に生かす為の結果となった。また、深い角付け角を得ることができるレー サーは、それと同時に脚部と上体の内傾軸をより深いものにすることができた。
 最新マテリアルの特性を生かすテレマークスキーレース技術として1番必要とい えることは、マテリアル自体のサイドカーブを活かす技術の習得。当然、レースシ ーンでズレは禁物。雪質やセッティング等の状況によりズレを利用するシーンも考 えられるが、極力避けたい。また、サイドカーブを最大限生かすために必要なのは 安定したポジション。そのポジションを考える為にも、細板時代の技術を見直す必 要性はあるだろう。
 レース技術そのものは最高峰。アルペンレースやF1レース。ラリーやツールド フランス。全てのスポーツに共通していえることは「早いものの美しさや魅了」そし て「リスク」である。当然、スローな滑走よりハイスピード滑走でのフルカービング は難しいといえる。また、ポジションを安定させることも困難といえるだろう。つまり レース技術の習得はテレマーク技術の完全たる習得ともいえる。そんなことを考 えると、全てのテレマークスキーヤーにレースを経験して頂き、そこで得た技術や バランス感覚、ポジショニングをゲレンデやツアー、パウダーというロケーションで 活かし切って頂きたいと願う。